共同研究プロジェクト
国立科学博物館 × トータルメディア開発研究所 共同研究プロジェクト
メタバース(仮想空間)におけるサイエンスコミュニケーションプログラムの研究概要を国際シンポジウムで発表
メタバース(仮想空間)におけるサイエンスコミュニケーションプログラムの実証研究
独立行政法人国立科学博物館と株式会社トータルメディア開発研究所は、総合知を目指すサイエンスコミュニケーション活動に関する共同研究の一環として、産業技術史資料情報センターの持つ情報や理工学資料などを活用した、メタバース(仮想空間)におけるサイエンスコミュニケーションプログラムの実証研究を進めています。 近年、新たな体験環境として注目されているメタバースは、商業イベントや放送番組等で導入が始まり、博物館や科学館での活用においても試行錯誤が重ねられています。 本共同研究では、より実践的な検証を行うために、メタバースに構築したスタジアム内で展開するサイエンスコミュニケーションプログラムの開発を行い、国内外のミュージアム、企業、教育機関、学会等への展開の可能性を探っています。この概要は、2023年10月8日-10日に国立科学博物館で開催された国際シンポジウム「Artefacts2023」内で発表をいたしました。
メタバースを活用したサイエンスコミュニケーション研究の背景
これまで博物館や科学館では、来館者の興味や理解を深めるために、模型や装置、環境再現、映像シアター等の様々な手法を導入してきました。また実験や工作、サイエンスショーなどのプログラムを展示と組み合わせることで、さらなる興味の喚起や学習の深耕を図ってきました。一方、館内で展開する展示やプログラムは、実際に館を訪れた人しか体験することができず、空間的・演出的な制約もあることから、より多くの人々の参加や、大型資料を扱うダイナミックなプログラム展開などは自ずと限界がありました。このような課題をふまえ、今回、メタバースにおける博物館体験の一つとして、サイエンスコミュニケーションプログラムの可能性について実証研究することになりました。メタバースで博物館資料の持つ魅力や背景を、双方向性のサイエンスコミュニケーション手法によってどこまで受講者に伝えることができるのか、またどのような機能の拡張や表現手法が必要なのかを実証研究により明らかにしていきます。
研究内容
1.メタバースにおけるサイエンスコミュニケーションの試行
2.メタバースにおける博物館資料やその資料の背景及びサイエンスの表現手法
3.アバター・サイエンスコミュニケータ※1の試行
4.科学系博物館の教育普及事業を、メタバース上で展開するために必要な基礎データの収集
※1研究者とプログラム参加者など人と人とをつなぐ、あるいは科学と社会をつなぐ役割を担う人材です。
新居浜旧端出場水力発電所跡の産業技術史資料を活用したサイエンスコミュニケーションプログラムの開発
本共同研究のサイエンスコミュニケーションプログラム制作では、愛媛県新居浜市の協力のもと、旧端出場水力発電所の産業技術史資料を活用し、水の位置エネルギーから得られる電気エネルギ−(発電量)を算出しながら、自然エネルギーのしくみを学べる学習プログラムを展開します。メタバースに参加者がアバターとして入ることで、一般的な展示室では展開が難しい大型タービンとアバターのサイズを比較したり、視点を自由に変え新居浜の地形を俯瞰しながら分水嶺や水路システムを理解するなど、メタバースの特性を活かしたダイナミックな体験をすることができます。プログラム内では体験だけではなく、サイエンスコミュニケータや他の参加者と算出した発電量から私たちの生活に欠かせない電気の使用方法や次世代型のエネルギーについて対話し、自然エネルギーへの理解を深めていく画期的なプログラムを目指しています。
今回のメタバースで使っている技術はTOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPAN株式会社 の技術協力を得ながら、同社の提供するメタパ®(※2)のシステムを活用して実証モデルを開発。
※2「メタパ®」はメタバース上に構築した複数の店舗や施設をモールのように一つに集約したバーチャルモールサービスです。VRゴーグルやゲーミングPCなどの特別な機器は不要で、スマートフォン、PCから手軽にメタバースを体験することができます。ショッピング、教育、観光など様々な用途で展開しています。
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