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「詩の宝石箱」が納められた小さな蔵井上靖は詩集『北国』のあとがきで、次のように述べている。『私はこんど改めてノートを読み返してみて、自分の作品が詩というより、詩を逃げないように閉じこめてある小さい箱のような気がした。これらの文章を書かなかったら、とうにこれらの詩は私の手許から飛び去って行方も知らなくなっていたに違いない。』ここに記された「小さい箱」という言葉には、詩の一篇一篇を慈しむような井上靖のまなざしが窺える。このまなざしから詩を鑑賞できること、それを展示の主題とした。そのため記念室の壁には様々な寸法・素材の小さな箱が埋め込まれ、中には詩が一篇づつ納められた。これにより来館者は箱の蓋を開けるという行為を経て漸く詩に対面することとなる。よってこの行為が来館者に井上靖と同じまなざしをもたらすと考えた。そしてこの箱は、詩を納めるに最も相応しい場所、つまり井上靖が幼少時を過ごした土蔵に納められた。 ◆館の公式サイト
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